【FA】激務だから?M&Aアドバイザーの退職理由を徹底解説!

M&Aアドバイザーは、投資銀行やFASにおいて高い人気を誇る職種であり、企業の将来を左右する重要な意思決定を支援する華やかな仕事です。経営戦略の最前線で活躍できることから、多くの人がその世界に憧れを抱き、目指しています。

しかし、表面的なイメージとは異なり、過酷な労働環境やキャリア上の課題が多いというのも現実です。実際に、M&Aアドバイザーとして働き始めても、勤続3年以内に転職する人も少なくありません。

本記事では、M&Aアドバイザーが退職する理由を深掘りし、その仕事の現実と課題について徹底解説していきます。現在M&Aアドバイザーとして活躍している方や、転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

M&Aアドバイザー(FA)を退職する理由

M&Aアドバイザーとしてのキャリアは、多くのスキルや経験を得られる一方で、業界特有の課題があります。退職理由は個々で異なりますが、代表的な4つの理由を管理人の周囲の話を踏まえてランキング形式で紹介します。

3位:仕事内容がつまらなかった

M&Aアドバイザーの仕事に対する期待と現実のギャップは、退職者が増える大きな要因の一つとなっています。契約交渉や高度な戦略設計に憧れて業界に飛び込む人は多いものの、実際の業務の多くは資料作成や情報収集など、地道な作業に費やされるのが実情です。たとえば、Excelで財務モデルを延々と調整し続ける日々や、膨大な資料をチェックする作業がその典型です。

特に、M&Aの実行フェーズ(Execution)は、定型的な作業が中心で、創意工夫の余地が少ないと感じる人も少なくありません。進捗管理やクライアントとの連絡調整などが多く含まれるため、一部では「伝書バト」や「PMO屋さん」と揶揄されることさえあります。その結果、「この仕事に専門性があるのか」と疑問を抱く人が出てくるのも無理はありません。

さらに、案件数が増加すると、業務がより単純化される傾向があり、長時間労働につながりやすいという問題も抱えています。もちろん、経験を積むことで高度な業務に携わるチャンスは増えていきますが、その過程で「こんなはずではなかった」「これが本当に自分のやりたいことなのか」と感じる人が多いのも事実です。こうした葛藤は、M&Aアドバイザーとしてのキャリアを長く続ける上で、特に初期段階で乗り越えなければならない大きな課題といえるでしょう。

2位:ワークライフバランスの限界

M&Aアドバイザーの職場環境は、一般的に厳しい労働条件で知られています。特にディールの最終局面では、深夜までの作業や休日出勤が頻繁に発生します。一部では月間の残業時間が80時間に達し、繁忙期には200時間を超えることもあります。この背景には、M&A案件の複雑さや長期化が影響していると考えられます。

以下に、各業態ごとの平均残業時間を一覧にまとめました。このデータは、M&Aアドバイザー(FA)業界がいかに過酷な労働環境であるかを示しています。さらに、比較対象として、ITコンサルティング企業の平均残業時間も併せて掲載しました。

会社名会社業態平均残業時間(時間)
1KPMG FASBig4 FAS63.6
2フロンティア独立系FAS61.5
3フーリハンローキー外資系FAS56.7
4DTFABig4 FAS53.6
5PwCBig4 FAS48.3
6EYSCBig4 FAS46.5
アビームコンサルティングITコンサル34.4
アクセンチュアITコンサル31.6

出典:Openwork「平均残業時間データ(2024年12月時点)

ご覧のとおり、FA業界では平均残業時間が50〜60時間を超えており、その厳しさが際立っています。一方、ITコンサルティング業界では平均30〜35時間程度に収まっており、FA業界の労働環境が他業種と比べて、いかに負担が大きいかが浮き彫りになります。

また、M&Aアドバイザーは常に最新の知識を求められる職種です。経済情勢や業界トレンド、M&Aに関する最新情報を把握し、クライアントに適切な提案を行う必要があります。そのため、自己学習の時間も確保しなければならず、これがさらなる負担となる場合も少なくありません。

特に、Big4系FASでは海外案件を扱うことも多く、時差対応や英語でのコミュニケーションが必要です。これにより、労働時間がさらに延びることがあり、昼夜逆転の生活を余儀なくされるケースがあります。これらの要因が重なることで、ワークライフバランスが一層悪化し、心身への負担が大きくなってしまうのです。

1位:意思決定をする側(投資家、経営者、事業家)になりたいから

M&Aアドバイザーとして働く中で、業務の限界や自身の役割に物足りなさを感じる人は少なくありません。特に、「アドバイザーの立場に留まるのではなく、自ら会社の意思決定にかかわるようになりたい」という願望が芽生える方は非常に多いです

例えば、クライアント企業の経営を間接的に支援する中で様々な課題やビジネスチャンスが見えてきますが、アドバイザーの立場だとあくまでも意見出しにとどまり、その意見を採用するかどうかは実際に意思決定を行う投資家・経営者にゆだねられてもどかしい思いをすることも多いです。

このように、自らがかかわる方達が経営というダイナミックな仕事をやることを目の当たりにしているうちに、「自身も同じように、、、」と思うようになります。

一方で、M&Aアドバイザーのスキルセットは、財務分析や経営戦略の立案といったバックオフィス業務で高く評価されやすい反面、事業開発やプロダクトマネジメントといったフロントライン業務に直接結びつくことは少ないのが現実です。そのため、事業会社に転職した場合、多くの人が財務部門や経営企画部門に配属される傾向があります。

もし「事業の最前線で活躍したい」というキャリアを目指すのであれば、アドバイザーとしてのスキルに加え、事業運営に関する知識や実務経験を早い段階で積むことが重要です。たとえば、スタートアップや小規模事業への関与、プロジェクトマネジメントの実践経験を通じてスキルを磨くことが有効な方法と言えるでしょう。

M&Aアドバイザー(FA)を長期間続けたときに発生する後悔

M&Aアドバイザー(FA)は、専門性の高い業務に携わり、高収入やキャリアアップの機会に恵まれる職種です。しかし、そのキャリアを長期間続ける中で、特有の課題や後悔を抱えるケースも少なくありません。以下では、M&Aアドバイザーを続けることによって生じる典型的な後悔について解説していきます。

M&Aアドバイザーを続けすぎて色が付きすぎた

M&Aアドバイザーとして長く働くと、「専門性が強い」という点がメリットにもデメリットにもなり得ます。財務デューデリジェンスや企業価値評価といったスキルは、同業他社やバックオフィス部門では高く評価される一方で、事業開発やプロダクトマネジメントなどの「事業サイド」に直接応用するのは難しい場合があります。そのため、転職活動における選択肢が限定されることも少なくありません。

実際、M&Aアドバイザー出身者が転職先として選ぶことが多いのは、CFOや経営企画といったバックオフィス系のポジションです。これらの職種では、M&Aで培った知識や経験を活かしやすい一方で、「自分が事業を動かしたい」という志向を持つ人には物足りなさを感じることもあります。このように、高い専門性を持つことが強みであると同時に、キャリアの方向性に「色」がつきやすく、異業種や異分野への転身が難しくなるという側面も否めません。

バックオフィスの求人は来るが、ビジネスサイドの求人がなかなか来ない

M&Aアドバイザーとしてキャリアを積む中で、その専門性は主にバックオフィス部門で高く評価されることが多いのが現状です。特に経営企画や財務部門は、M&Aアドバイザーとして培ったスキルや経験と親和性が高いため、関連する求人オファーが集まりやすい分野といえます。

一方で、マーケティングや営業、プロダクトマネジメントといった「ビジネスサイド」のポジションに挑戦する場合、状況は一変します。これらの職種では、市場理解や顧客対応、プロジェクト運営など、M&Aアドバイザーの経験とは異なるスキルが重視されるため、採用担当者から即戦力として評価されにくいのが実情です。

さらに、M&Aアドバイザリー業務は、定型的な作業が中心となりやすく、事業戦略やマーケティングに直接関与する機会が限られています。このため、これらのスキルを自然に習得できる環境には乏しく、ビジネスサイドへの転職を難しくする一因となっています。

M&Aアドバイザーを続けすぎて年収が上がり、容易に転職しづらくなった

M&Aアドバイザーのキャリアには、年収が上昇しやすいという特徴があります。特に、BIG4系のFASや投資銀行では、30代半ばで年収1,500万円以上を得るケースも珍しくありません。この高収入は多くの人にとって魅力的ですが、同時に転職市場での「足かせ」となる可能性も含んでいます。

たとえば、スタートアップ企業や中小企業への転職を考える場合、現職での高い年収を基準にすると、大幅な収入減を受け入れざるを得ないことがあります。この経済的なリスクを理由に転職をためらえば、結果的にタイミングを逃し、キャリアの選択肢が狭まることもあるでしょう。そのため、高年収を手放す覚悟を持つか、あるいは現在の収入を維持しながらキャリアの幅を広げる方法を慎重に模索する必要があります。

まとめ

M&Aアドバイザーのキャリアは、専門性や高収入といった大きな魅力がある一方で、過酷な労働環境や将来的なキャリア選択の制約といった課題も抱えています。特に、働き方や仕事内容への飽き、ワークライフバランスの悪化といった退職理由は、多くのM&Aアドバイザーが直面する現実です。

こうした課題に気づいた時点で、自身のキャリアビジョンを改めて見直すことが重要です。「なぜ退職を考えているのか」「次に何を目指すべきか」を具体的に整理し、それに必要なスキルや経験を戦略的に積み上げていくことで、新たなキャリアの可能性を切り拓くことができるでしょう。

今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。

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この記事を書いた人

IBD→FAS(M&A)→事業会社(社長室/事業責任者)。USCPA全科目合格。現在は複数事業(BtoB SaaS)責任者、新規事業担当、経営管理・M&A・IRが主要業務

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